Linux Car計画

Also available in English and Korean (한국어).

電源フィルタ・レギュレータ回路

車のバッテリ電圧は12Vだと言われるが、実際にはかなり大きな変動がある。 エンジンOFFだとほぼ12V前後で安定しているが、エンジン始動時は、 クランキングの高負荷のため、瞬間的に6〜8V程度まで下がる。 エンジン作動時はバッテリの充電電圧で14V前後になるが、 オルタネータ(発電器)は大きなノイズ源でもあるし、 各種モータなど電装品も動かす度にノイズを発生する (オルタネータもモータも誘導性だ)。 このような汚れた電圧をそのままコンピュータに供給するのは危険だろう。 Web上で見付けた情報で、車の電源を直接つないでいるという人がいたので、 シガーライターからとった電源をそのまま接続してみると、 問題なく動作はしたが、継続的に使っていれば壊れるのは間違いないだろう。

そこで、車の供給電圧から安定した12Vを作る回路が必要となる。 しかし、エンジン始動時の低電圧に耐え得るようにするには、 スイッチングレギュレータで昇圧するか、 別の専用バッテリを積む必要があり、容易ではない。 そこで、今回は低飽和型 (LDO) の3端子レギュレータ LM1084 を使い、 エンジンがかかった後の約13V以上の電圧を12Vに変換する回路とした。 LM1084は約1Vの電圧降下で動作し、最大5Aの電流を供給することができる (Cubidケースの電源は4.58Aとなっている)。

なお、この回路では、エンジンを切ったあとPCをシャットダウンをさせ、 自動的に電源が切れるまでの電力も供給したい。 この間はオルタネータでなくバッテリ電圧からの駆動となるため、 レギュレータによる1Vの電圧降下をはさむと12Vを供給できない。 そこで、付属のACアダプタとPCの間にLM1084を挿入して実験してみたところ、 PCへの供給電圧はほぼ11Vとなったが、PCは問題なく動作した。 この結果から、この構成のまま、 シャットダウン時だけバッテリ駆動させることにした。 規格外の低電圧で動作させるため、 DC-DCボードにストレスをかけることになるが、 シャットダウン時間は最終的にはかなり短くなる予定だし、 エンジン停止直後のバッテリ電圧は一般に高いし、 電源の設計容量と実際の消費電流には2倍以上の余裕があるため、 問題ないと判断した。

回路設計

レギュレータの前段には、通常のコンデンサに加えてコイルを直列に挿入、 LCフィルタを構成し、瞬間的な電圧変動に耐えるようにした。 電圧が上がる分にはレギュレータが吸収できるが、 13V以下に下がったときは、 入力段のコンデンサの電荷がバッテリ側へ放電してしまう。 そこにコイルが入っていればある程度の時間は防いでくれる。 コイルは、PCのパルス性の電流消費を平滑化し、 ノイズをばらまくのを防ぐ役割もする。

さらに、車載機器用のサージ吸収ダイオード (20V) を入れて、 レギュレータに最大定格 (30V) 以上の電圧がかかるのを防止し、 入力の最前段にはDC用ラインフィルタを入れて高周波ノイズを防止した。

電源フィルタ・レギュレータ回路図

LM1084の入出力間に入っているダイオードは、 入力が急激に下がったときに逆電圧がかかり、 レギュレータが破壊するのを防止するためのもの。 入力側のコイル(L)とコンデンサ(C)の値は、 L/Cが小さくなるように選ばないと、 負荷変動によるオーバーシュート/アンダーシュートが大きくなり、 かえって危険なので注意が必要だ。 大きいケミコンと別に、0.1μの積層セラコンをレギュレータの近くに置いている。 これは高周波の変動に対してレギュレータを安定させているつもり。

リレーはレギュレータを通った後に入れている。 理由は、コントローラ回路のほうに、 レギュレート済の電源を常時供給する必要があったためだ。 このため、レギュレータは常にバッテリに接続されていることになる。 DMMで無負荷時の電流を計ってみると、5.2mA 程だった。 予想していたより多めだったのだが、 データシートを確認してみると確かに典型値 5mA と書いてある。 ちょっと心配になり、計算してみると、 1週間車を放置したとしても1Ahに届かない。 車のバッテリは40Ahとか55Ahとかなので、全く問題ないレベルだった。

熱対策

このようなシリーズレギュレータの回路で最も問題になるのは発熱だ。 このPCの電源は公称55Wとなっていて、 付属する12VのACアダプタの出力は4.58Aと書いてある。

そこで、最大電流 5A として計算してみた。 供給電圧が14Vとすると (事前に自分の車を計ると13.8Vだった)、 (14V-12V)*5A = 10W で、レギュレータは10Wを損失、 つまりこれだけ発熱することになる。 データシートに基づいて熱抵抗を計算していくと、 約4°C/Wのヒートシンクが必要ということになった。

しかし、使用するマザーボードは EPIA のシリーズ中最も消費電力の少ないものだし、 HDD以外のドライブも積んでないので、 55Wよりはかなり省電力であることが予想される。 実際に計ってみたところ、HDDのスピンアップ時 2.1A、 Linuxのアイドル時 1.2A、HDDとCPUともにフルで動かしたときに 1.6Aという結果が出た (ただし、DMMを目視しての計測なので、 瞬間的にはもっと高い値が出ているはずだ)。

実際に手持ちのヒートシンク (熱抵抗は明記されていないが、 Web上のカタログなどから類推すると10°C/W前後だろう) にレギュレータを固定して12V電源からPCを動作させてみたところ、 やや暖かくなるという程度で、十分に余裕がありそうだった。

一時はケースそのものをヒートシンク代わりにすることも考えたが、 ケースファンの直近に設置できるので、強制空冷の効果も期待でき、 このヒートシンクで行くことにした。

製作

以上で回路はほぼ固まったので、製作に入った。 プリント基板は作らないのだが、最適な部品のレイアウトを決めるため、 基板CAD pcb を使った。この時点で、 使う予定のユニバーサル基板に全ての回路が収まらないことが判明したので、 レギュレータ回路とコントローラ回路は別の基板に分けることとなった。

部品レイアウトと配線

基板の外への配線は、すべてコネクタを使って仕上げた。 コントローラボードとの接続部分は、4ピンで十分なのだが、 コントローラボード側と同じものが入手できなかったので、5ピンで代用した。 電源ラインのケーブルとコネクタの圧着は、 接触抵抗が大きくなって発熱しないよう、専用工具でしっかりかしめた。

基板半田面。太いスズメッキ線で配線した

ダウンロード


次へ | Linux Car計画